おはらい町は、伊勢神宮の内宮前に位置する伝統的な町並みを残す地域であり、三重県伊勢市の代表的な観光地です。この町は、伊勢参宮街道沿いに広がり、石畳の道と古い木造建築が特徴的です。訪れる観光客は、歴史的な風情を感じながら散策を楽しむことができます。
おはらい町は、宇治橋のたもとから北へ向かう約800メートルの旧参宮街道沿いに広がっています。両側には古い民家が並び、特に「妻入(つまいり)」の木造建築が目立ちます。この建物様式は、神宮社殿が「平入(ひらいり)」であることに由来し、同じ平入にするのは恐れ多いとの考えから、地元では妻入が選ばれたと伝えられています。
また、町には、神宮道場や祭主職舎などの歴史的な建物も見られます。これらの建物は、かつての神宮司庁や慶光院家のものであり、町の歴史を感じさせる存在です。若者からお年寄りまで幅広い人気を誇る「おかげ横丁」もこの一角にあります。
おはらい町の町並みは、1970年代以降、景観維持を目的に民間主導で進められたまちづくりの結果、整備されたものです。1979年には、「内宮門前町再開発委員会」が結成され、伝統的な町並みの再生が始まりました。この再生事業は、地域の人々の熱い思いと、三重県や伊勢市当局の協力により、わずか10年で江戸時代の町並みがよみがえったのです。
さらに、1989年には「伊勢市まちなみ保全条例」が制定され、伝統様式を取り入れた修景の際に融資を行う「伊勢市まちなみ保全事業基金」が創設されました。この保全事業は、2009年に「伊勢市景観計画」に引き継がれ、廃止されましたが、町の景観保全は今なお続けられています。
1993年の式年遷宮に合わせて、「おかげ横丁」が開業されました。このおかげ横丁と生まれ変わったおはらい町は、2002年には年間入込客数が300万人を突破し、お蔭参りの頃の賑わいを取り戻しました。しかし、多くの観光客が訪れるようになったことにより、交通安全の問題も発生しました。そのため、2009年7月25日から土日祝日にはおはらい町通りが歩行者天国となりました。
おはらい町通り沿いには、多くの店舗や施設が並んでいますが、ほとんどの店が17時に閉店するため、観光客は早めの訪問を心がけると良いでしょう。以下は、おはらい町通り沿いにある主な店舗・施設の一部です。
赤福本店は、五十鈴川に架かる新橋のたもとにある和菓子店です。看板商品の「赤福餅」をはじめ、季節限定で「赤福氷」や「赤福ぜんざい」も提供されています。赤福は、おはらい町の再生にも深く関わっており、町の歴史と共に歩んできた老舗です。
伊賀くみひも平井では、奈良時代から伝わる伝統工芸品「伊賀くみひも」の販売と手作り体験を行っています。この体験は、観光客に日本の伝統文化を直接感じてもらう機会を提供しており、人気のあるスポットです。
豆腐庵山中は、豆腐を使ったソフトクリームやドーナツなど、オリジナルの商品を提供する店です。ヘルシーでユニークな商品は、観光客にも地元の人々にも親しまれています。
岩戸屋は、郷土料理を提供する食堂と、岩戸餅や生姜糖などの名産品を販売する土産物店が併設された店舗です。地元の味を楽しみながら、お土産も購入できるため、多くの観光客に利用されています。
神宮道場は、1973年まで神宮司庁として使用されていた歴史ある建築物で、現在は神職を志す者の研修施設として利用されています。この建物も、おはらい町の歴史を物語る重要な施設の一つです。
五十鈴川郵便局と百五銀行内宮前支店は、いずれも周囲の町並みに合わせた妻入建築で建てられています。これにより、町の統一感が保たれ、訪れる人々に一貫した歴史的風景を提供しています。
おはらい町は、観光地としての魅力を維持しながら、実際に住民が生活する町としての役割も果たしています。伊勢おはらい町会議などのまちづくり組織は、町の未来を見据え、地域と観光の共存を目指した取り組みを続けています。
町並みの保全と発展のバランスを保ちながら、おはらい町は今後も日本の文化と歴史を伝える場所として、多くの人々に愛され続けることでしょう。
伊勢市駅・宇治山田駅からバスで15分 *近鉄・JR伊勢市駅から外宮内宮循環バスに乗り停留所『神宮会館前』で下車